若気の至り

呼吸器外科に関して、日頃の学んだことをまとめていきます。不定期。

原発性肺癌に対する世界初の手術成功例

Successful removal of an entire lung for carcinoma of the bronchus

Evarts A. Graham M.D J. J. Singer M.D

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.3322/canjclin.24.4.238

 

この論文は1930年に発表されており、「原発性肺癌に対する世界初の手術成功例」として知られている。タイトルの「carcinoma of the bronchus」とは気管支内に増生した癌を指す。主に扁平上皮癌を意味し、本論文中でも扁平上皮癌の診断に至っている。

 

当時はX線ラジウムを用いた放射線療法が最新治療であった。しかし、5年間再発がなかった症例報告がなく、原発性肺癌の完治は困難な時代、外科的治療に頼らざるを得ない状況であった。

 

また、肺癌に対する外科治療として肺癌を完全に除去できた症例報告がKummellからされたが、術式は恐らく肺全摘であり、その他詳細不明、少なくとも患者は亡くなっている内容であった。いかにして、症例に対して適切に肺癌を完全に除去するかが当時の課題であった。

 

本症例では、左上葉支に増生しており、閉塞を伴っていた。上葉のみ切除しようとするも、下葉支にも広がっており、また炎症か転移かわからないリンパ節主張が多数分岐部に見受けられたことから、肺全摘を施行するに至っている。

 

術後経過良好であり、再発を示唆する所見なく経過。おそらく、肺全体が除去される場合、患者は、肺葉切除、部分切除される場合よりも、再発の機会が少なくなると推測されるとしめくくられている。

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現在は画像診断が進歩し、葉切除+リンパ節郭清や区域切除、部分切除と術前診断に応じて適切な術式を選択することができる。1951年に葉切除とリンパ節郭清が肺全摘と予後が変わらないと発表されるまでは、全摘時代が続いていた。